2009/10 Diving log

晩秋の浅瀬で 7 09/11/19 (木)

超普通種の超レア種 地域差のマジック

 気が付けば、既に11月も後半。今月の海にまだお邪魔していませんが、ダイビングってなんだろうなんて ちょっと考えたりなんかもして。大体レアものってのは魔力があって、ダイビングの世界じゃなくても人のココロを夢中にさせちゃうんだけど、ふと立ち止まり頭が冷えると考え直すこともある。勿論稀少な背景にどうしてここでその生物がいるのかの経緯があり、そしてその偶然の素晴しさ、それ故の稀さ思えば小躍りどころか大踊りすらしたいところですが、目の前の稀少さのみに価値を置くダイビングがわたくしの中で相変わらず色を失っていたりもする。すみませんね、理屈がましくて。永遠の初心者であるわたくしは 自分は身の丈に合ったことをしていよう そんな心境。

 11月ですね。エチゼンは海中の吹き溜まりのよーなところで、屑々となって転がっているかな。遠い記憶ですけど、エチゼンの多い年に青海島の砂地なんかにエチゼンの屑がごろごろと転がっているのを見たことがあります。エチゼン屑なんてダイバー達は誰も見ません。ダイバーじゃなくても見ません。既に泳いでもなく、汚れ千切れた生物は興味の対照から外されます。でも、あのきったないエチゼン屑が生物の繰り返しの幕として、あまりにリアルに思え私は忘れられません。屑になって吹き溜まるエチゼンは砂にもなれず、いつしかわからなくなり、それを抱える海は新しい命を抱き冬を迎えるのです。

 

晩秋の浅瀬で 6 09/11/13 (金)

さあ どれが偉いウマズラかっ?!

 先日からエチゼンと伴にカワハギたちをWebで調べててへえと思ったこと。

 1・カワハギの優劣は体で分かるといわれる。優位な立場のカワハギは頭の棘を立て、尾鰭をいっぱいに開き、体色も鮮明になる。しかし、これも更に優位なカワハギが現れると一瞬にして変わる。海中で見かけたとき白っぽいものは弱いカワハギである。
<ダイバーのための海水魚図鑑>

 2・同じ水槽の中にカワハギを入れると、個体間に優劣関係が生じて体色などに現れる。もっとも劣位の個体では体色は白っぽくなり、背びれと腹びれの棘が倒れ、尾びれも閉じている。優位の魚になると体の黒色斑が鮮明になり、背びれと腹びれの棘も立ち、尾びれも開く。優位の程度が高くなるほどこの傾向は明瞭(めいりょう)となる。優位な魚でも驚いた場合には劣位の魚と同様の状態になる。
Yahoo!百科事典

 人様の引用で文面埋めるのは好みじゃありませんが、あの繊細さの欠片もない厚肌の、エチゼン平気平気ヤスリ肌カワハギがですよ、こんな社会的体色変化するんですってさ。へーですよ。エチゼンは弱っても悪党に見えるよーに、カワハギも一見無神経に見える。
 見た目の印象っていい加減なものね。

 言葉が柄になってカラダに描かれる階級名札付き社会って、エチゼンに群れ群れのウマヅラハギも群れつつ敏感に優劣色を呈していたんだろうなあ。偉いウマズラと下々のウマズラ、今度群れていたらよぉく観て撮影しとこ。地味&愛らしさ無しのカワちゃんに、撮影意欲が湧けばのハナシだけど……。

……つづく?(気が向けば)

 

晩秋の浅瀬で 5 09/11/08 (日)

可愛い顔して ええことしてるなー

 ウマズラハギは、あのエチゼンの触手を美味しそうに食べるのか。いや、食べることができるのか。私はね、ようよう触手にやられた手首が痂皮になると同時にウマズラハギの腹が気になっております。

 カラダは触ったまんま 見たまんま、きっとあの厚いヤスリのよーな皮が鎧になっているんだろうなと思ってますが、口や腹の中も刺胞のチカラが及ばない仕組みになってるんだねえ。どえらい生き物でも、大概捕食者が近辺にきちんと暮らしているもんなんで、クラゲが魚に食べられてもちっとも構わないんですが、それがそんなに好きか?と思う食べっぷりに世の中いろいろと思うばかり。

 あやかりたいですねえ、どう捕えても頂けないモノを寧ろ好んで喰い ハライタもなし。ああ あやかりたい あやかりたい。そんなツワモノに私もなりたい。生き方も、カラダの仕組みも多様性に満ち溢れる海の中。イソギンチャクを隠れ蓑にするクマノミも似たよーな匂いがあります。頂けないものを逆手にとって安全に可愛く生きていくって ああ あやかりたい あやかりたい 私はとてもあやかりたい。食べられているエチゼンは、ビジュアル的にグロなので可哀相な図なのに、尚 凶悪に見えるところも人生において大変意味深く、澄ました顔で群がる魚たちも意味深い。生物の生命のパズルはつくづく意味深い。

……つづく@多分。

 

晩秋の浅瀬で 4 09/11/06 (金)

どこの部分も食べてるけど、触手や傘の内側が好み?

 浅場でエチゼン三昧がメインですが、ちょっとはファンダイブらしい写真もあるのよ いちおう。でも、自宅で冷静に考えても、晩秋の海で弱りカワハギに捕食される姿は、この地域で生きる野生生物のありようだなと思うのです。ええもん見たなあと、私は素直に思ってます。季節回遊魚のように、南国の欠片が流れてきたような愛らしさはありませんが、美しい海中写真は世の中に山盛りあるので最後までもエチゼン&カワハギ乱舞写真で飾ろうと思います。

奪い合わなくても 食べきれないほどあるぞ

 さて、カワハギカワハギと言ってますが、ダイバー方は呼び名に几帳面なので訂正しときます。エチゼンに群れ群れなのは、ほぼウマズラハギ。そしてカワハギ少しのMIXでウマズラハギ率95%(印象)。味覚的にはウマズラハギが劣位らしいけど、スーパーでカワハギの名札が堂々と貼られ陳列されているのはウマズラハギなのでそのヘン全然問題なく鮮魚コーナー大乱舞です。

 ダイビングとしては邪道な浅場での光景で、スーパーにいかなくても虫取りさえ網持って入れば、隣近所に分ける程捕獲できそうな気分を味わうわたくし。パツパツのお腹にはエチゼンの触手がみっちり入っているだろうから、ハラワタを出す時は手袋したほうがいいかなとも思う。主婦がこんな光景みたら、こんなことしか考えない。生真面目なダイバー類がこの文面を読んで、捕獲したのかと仁王立ちで目を吊り上げるかもしれないので補足しますが、思うだけで捕獲してませんからね。

 漁のことはわからないので印象で無責任なことしか言えませんが、こんだけカワハギが喜ぶエチゼンは厄介とは言い切れないような……。いや、厄介なんだろうなあ そうらしいしなあ。

 カワハギの成体をこんなに熱心に観たのは初めてです。観ても観ても、どう観ても鮮魚コーナーがチラつきますが、地元の食材は地元の野生生物だと再確認。で、カワハギってのは硬骨魚綱フグ目カワハギ科という立ち位置らしく、カワハギの土台はフグなのかあ そうかあ 膨らまないけど面が同じやなあああ←と納得。旦那の身内は辿っても辿っても土台が似ている。旦那は私の身内を見ると進化の過程のようだという。設計図が同じなんで組み変えて次々枝葉分かれてみても他人から見ると、あ〜と納得するカタチがそこにある。

 しかし、そこは素人の見た目の小話で、網とか目とか、遺伝子辿って小分けしてゆくエライ方々は思いもつかない土台の奥深さを教えてくれて腰が抜けます。

ああ ウマズラハギダイビング

 エチゼンともカワハギとも関係ない話なんだけど、先だってサファリランドで見たキリンは鯨偶蹄(くじらぐうていもく・げいぐうていもく)。これってキリンは鯨なのか?とわたくしは大変驚き、更に鯨は<ゾウ疑惑のちカバ>だとされている様子に椅子から5cm飛びました。(興味のある方はお調べください カバですよカバ)。

 網とか目とか科とかそんなんが、どう近しく どう仕分けられているのか存じませんが、キリンが鯨だったり、鯨がカバだったりする凄さを思うと、硬骨魚綱フグ目カワハギ科ということはヒトは確かに猿だなあと思う程、まことに素直にお前らの面はフグと思えてなかなかいいです。個人的印象での話しだけど。

……つづく。

 

晩秋の浅瀬で 3 09/11/05 (木)

さすが皮の厚いカワハギ エチゼン全然へいき

 エチゼンの触手が絡まった手首。2〜3日くらい異様な痒みで就寝中に掻き、クラゲの痕というより今やただの傷。で、自分は好きなことをやった結果なんで、意外と気にならないんですが、人目につく場所なもんで、「それはなんだなんだ。」と結構聞かれます。聞かれれば、あやしいネタでもないんで、「エチゼンに絡みつかれた。」と答えると、今度は「エチゼンがいるのかいるのか。」とこっちが思う以上に驚かれたり。

 更に、わたくしが大喜びで積極的に近寄り戯れた←が なかなか思ってもらえない。エチゼンもなかなか凄く目を奪われるのだと語っても伝わらない←仕方がない…。

ゴジラ〜ゴジラー〜

 ダイビングの正当な楽しみ方ってあるんかないんかわからんけど、季節ごとの生物をカラダいっぱいに感じるというのは、もんのすごくヨロコビ震えることのよーな気がします。ましてやこんなインパクト絶大な生物が、エントリーする足元に注意しなくてはならんほど浅い場所に、ごろごろぼろぼろといるなんて物凄いではありませんか。だめですか、共感してもらえませんか凄いのに。

 と同時に、正直 錦江湾の衝撃が深く、暫くわたくしは浅い場所だけ潜っていたいです。そんな気がします。

……つづく。

 

晩秋の浅瀬で 2 09/11/03 (火)

 この季節、悪者&ブキミ者として名高いエチゼンクラゲ。わたくしは漁と縁遠いもんで、エチゼンは赤潮と並んで季節を感じる生物というか……ええ すみません 苦労も知らず暢気なことで。
 全く、中国や韓国の海洋汚染の影響だ、富栄養だと環境問題でも話題のエチゼン あんたすんげえ悪者になってるよ。テーマはいかにして君等を減らすか……ああ ナンマイダ。

 初めてエチゼンを拝見したのも、この青海島船越のエントリー口(というか浜)で、あれは衝撃でしたねえ。ショックで一ヶ月潜れなかったですねえ。ライオンの鬣のよーな触手をゆらし、結構早い速度でばふっばふっとやって来るのは恐怖そのもの。しかし、秋の海を何度か繰り返すようになると、エチゼンの姿に ああ この季節がまた来たのだな なんてね思っちゃうよーになった。春の訪れは赤潮、そして秋はエチゼン、つまりこれらって存在じゃなくて程度が問題?なんだな。ちがうかな。

 11月を迎える浅瀬には、弱ったエチゼンが流され 泳ぐ力さえありません。そこに群がるのはカワハギで、傘だろうが触手だろうがどこでもイタダキ〜ってな食べっぷり。ほんと部位を選ばず喰らうんですね。そうして、波任せ カワハギ任せのカラダになったエチゼンは姿こそ更にグロですが大変痛々しい。そうして私は、命がエチゼンからカワハギに移ろい、季節の時計は正しく動いているのを目の前に知るのです。

 少し前、島根の隠岐で撮影されたエチゼンネタのTV番組で、エチゼン退治にカワハギを使うという話をやってました。身近なネタなのでTV嫌いの私もふむふむと観たのですが、カワハギは心からエチゼンが好物なんでしょうねえ。どのカワハギも産卵前のよーにお腹が膨れあがり エチゼンで充足しているように見えます……が、カワハギは喰らうのを止めません。車に弾かれた狸に群がるカラスにも見え、カワハギは大変悪どく、撮影している私を横目で見つつクラゲ肉を引きちぎる面なんてもうもう極悪風。クラゲよりカワハギにシビレる。好みじゃないけど。

 しかし、群がるカワハギを撮影しながら こりゃ鍋三昧だわあーと思ってる自分。頭の片隅に柚子まで浮かぶ。食物連鎖にこうして人間もちゃんと加わっているんですよねえ。へへへ。

……つづく。

 

晩秋の浅瀬で 09/11/02 (月)

かわはぎーかわはぎー こりゃ鍋三昧ー

 かゆいです たいへんたいへんかゆいです。土曜日、弱り果て 又は命尽きたエチゼンクラゲがうようよと流されている青海島の浅瀬で、うっひゃ〜♪これはこれは♪とエチゼンにかぶりつきで撮影&観察したためです。ぼろぼろエチゼンなんて、どなたも寄ってきませんので、もうここにあるエチゼン ぜっんぶ私独り占めえええ!でした。大変たのしかったです。楽しかったですが、触手がブレスレットのように手首に絡んだりしました。

 現在 掻き毟った傷がブレスレットのように赤く輪を描いています。ぼりぼり……。
 今から仮眠、そして夜勤になるのでログは明日更新します。ああ かゆい かゆいけど私満足。

……つづくっ。