2010 2 Diving log

婚姻色のこと 10/02/12 (金)

 生物を通して四季を感じる<婚姻色>という ダイバーにとっては聞きなれた言葉。これは、個々の生物が繁殖の時期を迎えいつもとは違う色柄を呈し、そして活発になる行動と伴に「ああ、婚姻色になったね」と聞き覚えていたように思います。しかし<婚姻色>とはどういうことなのでしょう。

 ▲ 2008/02/28 萩市須佐 

 ▲ 2008/03/13 萩市須佐 

 例えば、今回のチャガラ。チャガラは繁殖の時期を迎え、本当に<婚姻色>になっていたのでしょうか。素人なりの私見は先だって書いた通り、冬は確かに鮮やかに思えるけれど、夏や秋と色そのものが変化するとは思えないということです。鰭の色彩そのものは変わらない、しかし 体部そのものが灰色(個人的に表現すると灰蝋色)になっていると思います。更に白っぽい地模様が浮き出てきます。それは繁殖に対しての変化でないように思いますが夏とは違う色柄です。

 一番違うのは繁殖期を迎えたチャガラの腹鰭が濃紺となること。鰭の長短が雌雄差だとしても、どちらも腹鰭は濃紺(写真あり)。婚姻色はどちらかの性に現れるものと、その両方がある(Wikipediaより)らしいので腹鰭の色彩変化は婚姻色としてもおかしくはないように思います。

 ここで、余談 かつ疑問ですが、濃紺の腹鰭が婚姻色とすると、繁殖を終えた個体の婚姻色というものは 繁殖の仕事が終わるとするすると色が戻るものなのでしょうか?2008/03に、灰蝋色+白い地模様のチャガラで腹鰭が白い個体を撮影しています。一旦濃紺と染まった腹鰭が繁殖の役目を果たし、白色へと戻ったのでしょうか?鮭は繁殖が終わったら直ちに死ぬ(のかどうか解りませんが)、繁殖から死を迎えるまでに婚姻色はすっかり消えるものなのでしょうか?なんちゃって観察眼のわたくし、春を迎えるチャガラたちの腹鰭から色が失せ、一斉に白腹鰭となって姿を消すかどうかよく観てません。ああしまった こんなことだよ。この春必見、チャガラの腹鰭。

 

 余談のついでに余談の余談。
 繁殖時期を迎え 常時とは異なった
体色斑紋となるものが婚姻色。そこで夏のソラスズメです。


  ▲奇抜な青い模様は持続していないと思います 

ソラスズメの繁殖時期は夏ですが、ソラスズメのあの艶やかなラメラメした色と模様は婚姻色なんですかね?<そう聞いた記憶@山口>もありますが、素人ダイバーの私見としては「違う」ように思います。

 産卵床で卵の保護をしている真夏のソラを観察した時、目の前でソラスズメは何度も色彩変化をみせました。あれはホルモンの影響を受けた婚姻色ではなく神経の影響による色彩変化だと思います。鱗が逆立ったような、また蝶のような美しい青は一定ではありません。行動と伴に瞬間変化しています。”そんな婚姻色”があるのかもしれませんが、産卵床を保護しつつ”異性の鑑別や性衝動の挑発に役立つもの=婚姻色”の状態でいることは、命を繋ぐ行動の理に適ってないように思います。また、産卵床を守らずにいるソラスズメが左のような姿になっているとしても、果たしてこの色柄はホルモンの影響にて現れ、持続しているものなのでしょうか。

◆参考:青い魚はなぜ青い-魚の体色変化の不思議を探る 大島範子◆
http://www.mnc.toho-u.ac.jp/v-lab/fish/index.html

謎のまま つづく。

 

成長と鰭 10/02/09 (火)

08/08/01 須佐

08/08/01 須佐

 おぼつかない観察とヘボ写真を繋ぎ合わせて、腹鰭と背鰭のことをもう少し。まず、左のチャガラの群れは8月のものです。この頃は一見して「ああ、チャガラだな」と解る姿になっています。口の先はは成魚ではない黄色。これだけのものが行く先々で群れているのだから、さぞやよく観察できるだろうと思いきや、鰭の姿かたちを観察するのは至難の業(私にはですが)で、更に成魚となっても鰭は広げ具合で印象が変わり、長いか短いかさっぱり解りません。また、広げても鰭そのものが体と同じく未成熟(?)で、長短以前に”小さい”のです。鮮明な写真を撮るしかないので意地にも(ちょっとだけ)なるのですが、これがまた半透明の中層チャガラの鰭にカメラを向けても、カメラも「俺 何を見たらいいのだ?」と焦点をぼかし巧い事いきません。海面を仰ぎながら、「おまえが見るのは鰭だよ ヒレ!」と言い聞かせても、カメラは「ヒレってどれ」とトボケます。
 簡単に言えば腕がないってハナシでもあります。


 08/08/01 須佐

 言い訳ですが、相当頑張らないとダメです。中層で群れているチャガラはぼんやり浮いているのではなく泳ぎ進み、更に背鰭も泳ぎと伴に絶えず動いていて性別は私には解りません。

 じゃあ腹鰭はというと、どれも濃紺ではないように思います。随分前、♂のチャガラの腹鰭は紺色で白いのは♀と聞いたような気もするし、自分でもそう思っていたように思いますが、夏チャガラの写真を引っ張り出してもハラワタ部分の陰がちょっと邪魔ですが総じて白。こんな頼りないデーターで申し上げるのもナンですが、おこちゃまチャガラは白、繁殖期は先にご紹介した写真の通り 鰭の長い個体(多分♂)も短い個体(多分♀)も揃って濃紺。


08/08/22 須佐

 更に補足すると、繁殖期のチャガラも夏チャガラも蝶の羽のように広げる背などの鰭の色彩は同じ。違うのが腹鰭。冬に、チャガラが婚姻色となって「綺麗だ」と聞きますが(山口では)、成長したチャガラの背鰭そのものが大きく色調も定まり、同性間の威嚇や異性間の求愛行動が激しくなる冬場、鰭を強く広げる行動が目立ち、色がきちんと見えるという方が正しいような気もします。鰭の色彩そのものが変化していないからです。”婚姻色=成魚が繁殖期にのみ示す平常と違う体色”という指標に沿ってないように思います。


08/08/22 須佐

 しかし、これも私の感じ方や考えなので本当のことは解りませんが。

……つづく

 

冬チャガラの鰭 10/02/06 (土)

 日勤を終え、今から夜勤前の仮眠に入るので簡単な下書きでおくります。昨夜Logにしとこうと思いながら、考えが纏まらず眠気に負けて書けなかったことです。前年の続きなのでネタのポイントは同じです。

 まず、濃紺となる腹鰭。背鰭の長短が雌雄の区別となるなら、左の写真は♂と♀であり、繁殖前の何か意味ある行動と思える。通常チャガラは群れていても、わさーっと群れているだけで互いが絡むような仕草はしません。そして、繁殖時期になるとこのように交差姿勢を二匹が所々でやっているのです。

 で、腹鰭ですが、ご覧の通り背鰭の長い方も短い方も濃紺。下の追っかけている二匹も、背鰭は長い個体と短い個体ですが腹鰭は伴に濃紺。

 成熟し繁殖にてペアとなるチャガラの腹鰭は♂も♀も共に濃紺変化するのだと思えます。

 上・右写真 2009/02/12 

 山口県長門市青海島 紫津浦にて撮影 
 岩の奥に隠れたペアを撮影したものです
背鰭が極端に長い個体なのでしょうか?

 ただ、その性別を見極める手掛かりの背鰭が曲者で、♂が長い背鰭だとしても個体差があるようで、昨年岩の奥に隠れたいたチャガラの場合、長いというより鋭い槍のような背鰭でしかも割れており、通常ここまで尖った武器状背鰭は珍しい気がする。興奮のあまりきーーっとなって背鰭が尖った……ということも想像しても特異な形は個体差だろうと思うし、マッタリ遊泳している群れチャガラも、♂なのか♀なのかよくわからない中途半間な鰭もち者もいる上、鰭の広げ具合でも相当印象が左右され長短が解り難く性別も判断し辛いです。

 それと話を戻して雌雄の交差行動ですが、異性同士で決まった姿勢をとるというのは、どう考えても生物の場合目的は繁殖臭いので、交差しつつ互いに確認するなり挨拶するなり、計画を練るなりしてるのだろうと思うんですけど、これが同性(鰭が互いに長い為♂+♂と思われる)の絡みになると、もう単純に格闘ですね。下の動画も昨年のものですが腹鰭は繁殖準備態勢に入ってると思われる濃紺。多分 繁殖に関する戦いなんだろうなあ なんて想像しますねえ。

 ……とりあえず今日はここまでで つづく。

 

冬チャガラ 10/02/03 (水)

さあ チャガラの季節です

 久しぶりの潜水。海が少々怖くなってたんで、今までのように観察できるのだろうかと心配でしたが、超浅場のチャガラ潜水は不安感も全く無く、凍てつく海に60分×2本無事果たし妙に安心した次第です。寒さで痺れたんでEXしましたが、もっと潜っていたいと思えたんで、これで冬チャとまた遊べると確信。嬉しいですよ 全く。

 繁殖の時期を迎えるチャガラゾーン、ゴロゴロ石が積み重なる上層に漫然と群れるチャガラと、下層にうろつくチャガラ。ばらぁ〜っと広がるチャガラに線引きはできないけど、群れの構成は成熟度(というのだろうか?)と一致する筈(多分)。

 上層でしきりに捕食行動をとっている若チャガラを眺め、よしよし たくさんお食べ。そうしてきっちり大人になって晴れ姿を見せるのだぞ。と、揉み手擦り手のこのワタシ。そうです、二月初日 チャガラは繁殖行動の予行練習のように青い腹鰭をチラつかせ 首を曲げてクロス行動をとったり、しかしまだ本気でもないような、中途半端な青春光景。チャガラの季節は、まだまだ始まったばかりのようでした。たのしみだわあ。

……つづく。