2010 3月 Diving log

 クマノミ 2 10/03/29 (月)

 初めてクマノミというものを拝見したのは高知柏島で、ダイビングを始めてまだまだ30本程度の頃。目の前にいるクマノミに大感激したのを思い出します。あの頃はクマノミのみならず、何を見ても珍しく、ダイビングというものをやっている自分そのものにも新鮮さを感じていたなあ。
 クマノミは水色の海中にちゃんといて、それは本物で動いていて、正にイソギンチャクにすりすりしており、飼われていないのに大変可愛い。しかも揃ってわたくしを正面から眺めてる。
 うわあ なんてかわいいのだ!と思ったら 脳天気な私にぐぐっと近寄り、いきなり指をがりがり噛みました。

 クマノミは野生生物だったのです。

 以来、海の中の野生生物の魅力に没頭するに至ったわたくしですが、この海水魚の基本のキのよーなクマノミが性転換することは、ノンダイバーでも多くの方が御存知の通りで。それぞれがもつ自然の仕組みも人間を基準に考えると、あらゆる生物が<へんなもの>になってしまうのですね。人間も、カラダの奥底に性別の妙を持っているものなので、そのカラクリのバランスが崩れても 思えばそうおかしくもないのかも。

 

 クマノミだけでなく、いろんな魚が性転換を行いながら命を繋いでいます。性とは何故あるのかに辿り着くような生きるものたちの姿です。アメフラシなぞはそれぞれ半分♂半分♀で、アオサ揺れる春の海底で次々と繋がり軟体リングになっている。ほほえましいといえばほほえましい、気持ち悪いと言えば気持ちが悪い。個人的には 一部の鮟鱇が選んだ(というか そういう生態らしいけど)♀のカラダに完全に♂が一体化するというものの方が相当気持ち悪い。しかし、そうして海の世界に隙間無くあの手この手で生きてゆく、生きてゆくものたち。

 話はクマノミです。ニモ以来乱獲されているそうです。共存出来もしない 懐きもしない生物を、鑑賞目的で飼うことに不快感があるわたくしですが、息子のマンションにいつの間にか大きな水槽が設えられ、随分一人暮らしのココロを癒しているそうです。魚は飼われることで生活し、息子は飼うことで生活を暖めている。

 生きるものは複雑です。

 

クマノミ 10/03/26 (金)

 クマノミの卵です。

 結構長い期間、産卵と卵保護の活動があるという事なので、これはクマノミが普通に観察できるエリアの方は非常に見慣れたものだと思います。しかし、私には初クマ卵。過去 座間味へ訪れた時も鹿児島で潜った時も見てないんですよねえ。実際クマノミなんてガイドされなくても、あっちにむらむらこっちにむらむら群がっているんで、スルーNo.1候補なのかも。個人的には齧りつきNo.1です。

 海の生物の楽しさには、海が抱える胎内に命の姿が晒されているといいますか、人間のカタチに置き換えてなんでも考えてしまうことが既に大間違いだなと向き直るに至りますが、こういった卵が受精し生物の姿へと創られてゆくってもんを、半透明の膜を通して伺えるってのは頭がのぼせるような興奮を感じます。海は正しく胎内です。

 人間を基準に溢れんばかりの生物の姿を捉えるのがおかしいんだってな反省とトキメキは、海の生物だけでなく 陸地の生物でも思えるんですが、非日常的な海中世界を覗く楽しさと、人のカラダの中と海との類似が身勝手なロマンも手伝って海洋生物をより命の魅力として響いてしまう。
 このヘンに無理やりでも?げてカンドーするのは、私だけじゃないでしょうが、ねえ。

 カラダの中で守られていそうな卵というものや、一人前になるまでの未成熟なチビが、ぶらぶら岩に並んでいると、「おおお おまえたちー おまえたちおまえたちおまえたち おまえたちーー!」と続く言葉も無いままカメラを持つ指の先の先まで熱くなる。

 写真拝見する限り、卵は初めから楕円形で、チビも天井からぶら下がった雫状ですね。こっちも見てるけど向こうも見ている ずらずら見ている卵。こんなにしっかりと大きさがあり(なんでかダイバーは肉眼の限界に挑戦するような小さいものを好むけど)、熟した実のような色彩をもつクマノミの卵塊と親の保護行動が成長と伴に楽しめるっていいですよねえ。うらやましい……。山口では近年になって流れチビクマが登場してますが、写真に撮るのに可愛いサイズ(フォト派ダイバーには解る)で、こんな立派な卵をもつクマじゃありません。

 話は変わるけど、随分前 山口の某女性ダイバーさんがせっかく行くんだから撮れなくてもいい!とほぼ初カメラを持ち石垣に行ってきた時のこと、戻ってきて自分が撮ったカメラに無事クマノミが写っていたことと、偶然クマノミの傍にこの紅色のクマノミ卵が並んでいたことで大喜びしてたのを覚えています。クマノミも深度を求めないエリアも基本のキで新鮮さはないんだけど、生態観察なんて大袈裟な意気込みじゃなくっても、海中へ訪れることや命の姿に出逢うってのは素直にいいものだなあって思います。